日田玖珠地域産業振興センター

日田製茶園「日田にもお茶があることを知ってもらいたい」

ペットボトルのお茶が当たり前になって、お茶を急須で淹れて飲むということが少なくなっています。若い人たちのお茶離れが進むなかで、日田市で60年近く茶業を営む日田製茶園さんにこだわりを伺いました。

お茶本来の味を知ってもらいたい

私の祖父が始めた会社です。当時、祖父は市役所で働いていたのですが、お茶の勉強のために宮崎の茶業試験場に行って、お茶の育成法などを学んで帰ってきたのが始まりです。日田は気候も良く製茶に適していることで、最初は農協に茶業部を作ってお茶を製造していました。昭和24年に茶園を、昭和31年に茶工場を作り、昭和37年に日田製茶株式会社を設立します。今年で会社になって58年目です。

-それだけ長い歴史があると、引き継いでいく部分と発展していかなければならない部分ということをお考えになったと思いますが。

ぼくが社長に就任したのが平成20年ですが、そのころからちょうどペットボトルのお茶が流行りだしました。急須で淹れるお茶の需要が減り始めた年なんです。そこで、「これは何とかしなければいけない」ということで、機械を新しくしたりティーバッグの商品を作ったりと、時代に合った商品作りに取り組みました。

-新しい商品を作るに当たって、何かこだわりのようなものはありますか?

おいしいお茶を作るというのが1番ですが、いかに若い人にお茶を手に取ってもらえるか、飲んでおいしいと思ってもらえるかということですね。最近では「お茶=ペットボトル」になってしまっているので、それをちょっとでも戻したいという思いがあります。ティーバッグや粉末緑茶を作ったのもそのためで、「こういうものがあるよ」というのを周知させたいと思っています。

-確かに、急須で淹れて飲むお茶とペットボトルのお茶では味が全然違います。お茶本来の味を知ってもらいたいという思いがあるんですね。

日田の自然の山で育ったお茶

うちで作っているお茶は、日田産と他にも九州産のものとあります。中でも日田産のお茶は、全国的に見ると生産量がかなり少ないので、貴重なお茶なんです。粉末緑茶は日田産のみで作っています。
日田産のお茶を作り続けることが、「日田にもお茶がある」というPRになると思っています。

ここでのお茶の生産量ですが、葉っぱの量でいうと、多い時で約10トンです。その中の5トンは日田産です。そこから製品になるのが23%ぐらい。70%以上は水分として飛んでしまいます。粉末緑茶の場合、スティック1本で容量が1g程度ですから、少ない量でたくさん作れるし、手軽にお茶を楽しんでもらえるという思いから作りました。ただ、先代が残したものを消したくないという思いが強く、時代が変わっても日田のお茶を伝えていきたいという思いがありました。

-日田のお茶は、知覧など他の地域のお茶とどう違うんですか?

あちらは整地して肥料もやってと茶業専門でやられていますが、日田では専門にやっている人はほとんどいないので、本当の田舎のお茶の味です。自然の山で育ったお茶なので、ある意味、本当の無農薬茶ですね。

-熱湯ではなくちょっと冷ました温度のお湯で淹れる方が、味が良いと言われていますよね。

熱湯で淹れると先に苦味が出てしまって、お茶の甘味やうま味が出切らないんです。冷ましたお湯でじっくり淹れる方が、お茶っ葉が開いておいしくなります。

日田では新茶の時期に摘んで終わりですが、鹿児島のような産地ではその後に整地して、さらに二番茶、三番茶、四番茶と作ります。最後は9月末から10月初めにかけて採れる秋冬茶です。後になるほどお茶っ葉が硬くなるので値段は安くなりますが、ペットボトルのお茶の原料になるのはそういうお茶ですね。熱湯で淹れても大丈夫ですし、日光をたくさん浴びている分、栄養成分が多いのも理由です。

子どもたちに日田のお茶の良さを知ってもらいたい

お茶離れと言われていますが、やはり子どもたちには本当のお茶を知って、飲んでもらいたいですね。そのために、小学校の工場見学も実施しています。今は核家族が多いため、急須でお茶を飲んだことのある子どもが少なくなっています。子どもからのお礼状に「ぼくは急須で淹れたかったのに、お母さんに火傷するからやめなさいと言われました」というのがあって、「こういう時代になったんだなぁ」と思いました。本来のお茶をもっと身近に感じてもらいたいですね。

-小学校の工場見学はいつ始められたんですか?

5年前ぐらいですね。「ペットボトルもいいけど、日田にもお茶があってこうやって作っているだよ」ということを見せたかったんです。子どもたちに急須でのお茶の入れ方やお茶の葉っぱのことを知ってもらいたいという思いがありました。

-今後、会社としてどうなっていきたいという思いはありますか?

うちでも高齢化が進んでいるので、若い従業員を増やしたいですね。それも、ただ売るだけでなく、お茶についてちゃんと説明できる人材を育てていきたいと思っています。

〜自然の恵みがたっぷりのお茶〜

日田の山ですくすくと自然に囲まれ育ったお茶の葉。そこから出来上がった、ペットボトルのお茶とは全く違う、田舎の緑茶をぜひ急須で味わってみてはいかがですか。

連絡先

株式会社日田製茶園
大分県日田市刃連町804-2        

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